はわイヤン
ハワイには行ったことがない。だけどハワイ音楽は好きでよく聴いている。
僕はスチールギター、とりわけアコースティック・ハワイアンギターが好きなので、聴くのはだいたいソル・ホーピーとか昔の人のレコードなんかで、この夏は普段よりもよく聴いた気がする。2回ほどスチールギターかついで路上に出かけたりもした(じつは今夜も駅前で弾いてきた)。
ほいで僕はKanui&Lula(カヌイとルラ)というデュオが好きです。英HARLEQUIN監修(日本盤は山内雄喜さんの解説付)のオムニバス“TICKLING THE STRINGS 1929-1952”に入っている3曲しか知らないのですが、“Tomi Tomi”“Oua Oua”の2曲はずいぶんノベルティ色が強い曲調で、なにが良いってボーカルのジョセフ・スペンスみたいな歌声が「グッ」とくるのです。
カヌイさんとルラさんは夫婦で、ライナーを読むと妻ルラはウクレレとギターを弾きフラも踊ったとあるので、夫カヌイが歌ということになる。んだけども、写真ではスチールを弾いてるから歌とスチールがカヌイなんだろうと推測されます。この写真がまた男前。歌声からしてスペンス翁みたいなごっついやつを想像してしまいますが、なんかキャバレーの呼び込み店員みたいな、若干うさんくさい感じが漂っています。フランス・オデオンレコードのカタログからの写真らしいのでちゃんとした宣伝写真なんだろうけど、声のイメージと全然違うのでつい「この人ぜんぜん関係ない人なのでは?」という疑惑を抱いてしまうほどです。
まあそれはよしとして、僕は金子光晴の「ア、ロ、ハ、オ、エ」という詩にかつての日本でハワイ音楽がどのように聴かれていたのか想像を巡らせ、今夜もスチールの余韻とともに深いんだか浅いんだかよくわからないまどろみに落ちていくのです。ねむい。
僕らがきえていったあとまで
うたっている波のしらべよ。
しびれるような快い、
ねむりの唄、アロハオエ。
戦争からかくれて、そっと、
僕と子供と二人でかけるアロハオエ。
国風から叛いて孤立した魂を、
はるかにゆすってくれるアロハオエ。
(金子光晴「ア、ロ、ハ、オ、エ」後半部分より)